M&A Column

M&Aされた側の従業員は転職をするべき?必要な心構えとは?

Fotolia_102837689_M肉体改造で有名なパーソナルトレーニングジム「ライザップ」を運営するRIZAPグループは、中堅アパレルのジーンズメイト(売上規模93億8百万円、平成28年2月期)を子会社化すると発表した。RIZAPの事業拡大とジーンズメイトの事業の再構築というお互いの利害が一致してのM&Aだが、競争が激しいジーンズ市場で戦ってきたジーンズメイトにとっては、フィットネスやスポーツ衣料への新たな可能性を見いだせるチャンスになるだろう。

今回のケースのように、ビジネス戦略として頻繁に耳にするようになったM&Aは決して他人事ではなく、自分の身の回りにも突然に起こる可能性がある。M&Aがビジネスで一般的となった今、買収された側の従業員として巻き込まれたときの心構えを持っておくとよい。想定外でかつ突然の事態に備えてキャリア構築について考えておこう。

心構え1:転職は常に意識するべき

終身雇用の考え方はもう古い。転職回数が多すぎることは好まれないが、今は転職が当たり前の時代。加えて、成果に伴った実力主義にシフトしつつあり、長く勤めていれば年齢と共に給料が上がることは期待できない。キャリア構築のための転職が必要になっている。

M&Aや企業の業績に関わらず、転職情報にアンテナを張っておき、親身になってキャリアの整理をしてくれるヘッドハンターを見つけておくなど、面接を受ける必要はないが積極的に情報収集はしておいたほうがよいだろう。転職活動をしたことで比較材料ができ、改めて現職の良さに気づくこともある。転職はいつでも準備をしておくべきである。

心構え2:履歴書に書ける実績を作る

M&Aによって離職を勧告される場合がある。新たな経営陣による組織変更、管理部門の統合、不採算店舗のクローズによるリストラは頻繁に起こり得るシナリオである。反対に会社から君は必要だから残ってくれと言われる者もいる。会社に求められる人材になることで、優先的に待遇を考慮される。

会社に求められる人材とは、シンプルに功績を残す、実績を上げる人材のことである。M&A後も、実績作りに対して貪欲に働けば、会社から求められる人材になれる可能性は高い。もし転職活動をするとなった場合でも、実績を作っていれば有利に事が運ぶであろう。実際に、エース級の人材が買収された後にすぐ転職する話をよく耳にするが、彼らが転職できるのは、既に素晴らしい実績を持っているからなのだ。

心構え3:マネジメントをする側になる

日本では少子高齢化が進んでいて、加えて平均寿命も年々延びている。人生100年時代がくると言われていて、近い将来は年金が受給できる年齢は70歳以上になり、70歳もしくは80歳まで働くことが必要になる時代がくるかもしれない。今後は、働く年数が伸びることを想定したキャリア構築が必要になるだろう。収入や転職のことを考えるとマネジメント職が有利であり、個人ではなくチームで結果が残せるマネージャーになることを若いうちから意識するべきである。

今後は、実力主義の社会になると共に、幅広い年齢層とさまざまな国の人と働くことが増えるので、多様性のあるチームをマネジメントする能力を磨いておくとよいだろう。

デジタル化が進む社会ではAI(人口知能)、IoT(Internet of things)がトレンドであるように、M&Aもビジネス界で人気なツールとなりつつあり、今後さらに増えることが予想される。転職した会社が元々勤めていた会社に買収される、ということも十分起こり得る話だ。M&Aのたびに転職することはおすすめしないが、自分のキャリア構築に向けて考えるきっかけとして捉えてみてはどうだろうか。

Takashi IKEMATSU

アメリカ留学時代,古着屋のディーラーを経験。 国内の紹介会社を経て、2008年にエーバルーンコンサルティングを設立。 主にエグゼクティブのサーチやM&A案件を担当。

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